夢手帳とソフトウェア工学

2004年末の夢手帳☆熊谷式の売り上げはなかなかすごかったみたいです。一部が12,000円でバインダーは別途用意しないといけないという高価なリフィルだったにもかかわらず、能率協会のシステム手帳部門では一位の売り上げだったそうです。この夢手帳と似たようなアイデアのものとしてはフランクリン・プランナーがありますが、両者とも手帳に時間管理や人脈管理の機能だけでなく長期目標や生活態度を管理するための機能を持たせたものです。

どちらも人生の夢や哲学、行動指針、十年単位の長期目標を自分で決定し、手帳に書き込み、毎日の仕事や生活の中でそれを見返すことによって再確認と軌道修正を行なうというような考え方なのですが、これはソフトウェア工学の世界ではウォーターフォール・モデルに相当するような気がします。まずクライアントとの打ち合わせで必要な機能を洗い出し、仕様を決定し、開発、テスト&バグ取り、運用、というステップをひとつずつ順番にこなしていくもので、もし途中で問題が発覚したときにはひとつ前のステップに戻って修正を行なうというものです。ソフトウェア製品を作るのに十分な時間がかけられた時代にはそれが理想的な方法でした。

ところが変化の速い時代には、開発やテストの最中にクライアントの要望がどんどん変化し、仕様変更を何度も行なう必要が出てしまうことが多くなってきました。そのために近年になって注目されてきたのがXPやアジャイルという考え方のようです。仕様決定および修正/開発/テスト/アルファ版試用を数日〜数週間という短いスパンで繰り返し行なうことにより、クライアントからの新しい要求に即座に答えられるようにしようという考えです。

そういった短いスパンで目標の軌道修正を繰り返す考え方を取り入れた手帳は、見たことがありません。あえて言えば時間管理に関してはタイム・システムの手帳がそれっぽいかもしれません。ここらへんが、夢手帳に続くヒット手帳を生み出すカギになるかもしれませんよ。