驚き最小の法則

プレゼンテーションの技術の一つに「驚き最小の法則」というのがあります。プレゼンテーションというのは成果物の発表や相手を納得させるときだけに行うとは限りません。状況の芳しくないプロジェクトの進捗報告もしないといけないときがあります。そういう、マイナスの印象を与えかねないプレゼンをするときに使えるのが、この「驚き最小の法則」です。

この法則は、人間はいきなり大きな情報を一度に与えられるよりも少しずつ小出しに与えられる方が理解しやすい、ということに基づいています。血色の良い元気な人が意気揚々とプレゼンをすすめ、最後に「実は予定の半分も進んでいないのです」と言うよりも、元気のない人がもじもじしながら「あのぅ、じつはぁ・・・」と最初から隠し事があるかのように言っている方が、聞いている側も「なにか報告しにくいことがあるんだな」と思えます。そういう心構えができているところに「予定の半分も進んでいない」と言われれば驚きが少ないのです。驚きが少なければ、パニックに陥ったり逆上したりと言うこともありませんから、穏便に対策を考えることができます。

発表前にあらかじめ根回しをして、情報を流しておくというのも驚きを最小にする方法の一つです。今回のAppleのIntelチップ搭載発表もちょうどその形をとったのでしょう。まずWall Street JournalとC|Netから情報が流れ、開発者たちはいろいろと考える時間が与えられました。そして月曜日に正式発表を聞いて「あぁ、やっぱり本当だったんだ」と思わされたのです。五年間もIntelチップ搭載プロジェクトを隠し通してこれたAppleなのに、発表までの残り数日間で情報漏洩が起こるとは思えません。これは意図的にリークされた情報によって「驚き最小の法則」が実行された、と考えるのが妥当でしょう。