収入=結婚率なのか?

朝日新聞の記事によると、「若い男性の結婚率が、雇用の形態や収入の違いと強い結びつきがあることが、独立行政法人労働政策研究・研修機構」の調査でわかった。25〜29歳でみると、年収が500万円以上あると半数以上が結婚している一方、パート・派遣など非正規雇用者の結婚率は14.8%にとどまった。晩婚化や非婚化は若者の価値観だけの問題ではないことが鮮明になった。」とのこと。こういう統計記事を読むたびに、僕は「本当にその二つが因果関係にあるのか?」と疑う癖が付いてしまいました。

たとえば「学生の平均勉強時間」を調査するとしましょう。できるだけ多くの学生に聞き込みをするために、大学の図書館前で待機し、出てきた人たちに「講義以外で週に何時間くらい勉強していますか?」と質問するとします。・・・この方法ではデータ収集のやり方に問題があります。図書館から出てくるような学生は比較的勉強しているので、平均値が上がってしまうのです。

他にも、テストの得点を分析して「数学ができる学生は英語も高得点」という結果が得られたとします。でも「数学をがんばれば自動的に英語の成績も上がる!」と思うのは早合点です。数学や英語で高得点を取れた背景に共通の「問題を理解する能力」があるとしたら、どうでしょう。問題を適切に理解できたからこそ数学でも英語でも質問者の求める回答ができた、と考えてみるのです。共通の要因は「問題を理解する能力」ではないかもしれませんが、「共通の要因」を求め、それを差し引いて考えなければ、真の数学能力と英語能力は分からないのです。

今回の「収入と結婚率の関係」では、もしかしたら背後に「人格的要因」が隠されているかもしれません。つまり、「高収入が得られる職種に就けない性格」と「結婚できない性格」が同一のものだとしたら、収入と結婚率に直接関係があるのではなく、背後にある第三の要因(性格)が原因で低収入かつ未婚になっているのかもしれないのです。「低収入だから結婚できない」のではなく、「低収入になる原因が結婚の機会を阻害している」というわけです。ここでも、共通要因を見つけ、それを差し引くことで「本当に低収入だから結婚できないのか」が分かります。

また、ただ単に相関関係を求めるだけでなく、因果関係までもはっきりさせたいのであれば、「収入→結婚」を明らかにした上で、「結婚→収入」の可能性を否定できなければなりません。実はアンケートじたいに不備があって、収入の回答欄が「世帯の収入」ともとれる書き方だったのであれば、共働き夫婦の総収入が多くなるのは当たり前のことです。

新聞は一般大衆向けに書かれているので突っ込んだ議論がされないのは別に良いんですが、影響力が大きいだけに、もうすこし慎重な論調で書いても良いと思うのです。