クリティカル・リスニング・ヘッドホン

うちの学部には耳の肥えた人が多いのですが、その中でもイヤー・トレーニングの講師とクラシック・プロデューサーでもある助教授の二人はおそらく学部の中でも耳が抜きんでているでしょう。その二人がいろんなヘッドホンを聞き比べ、選ばれたヘッドホンは・・・

Sony MDR-CD900STでした。感度の良さや周波数応答の自然さなどを総合して、クリティカル・リスニングができるヘッドホンはこれだ、という結論だそうです。僕の持っているSony MDR-7506ととても形が似ていますが、音質が異なるそうです(MDR-CD900STは5Hz〜30kHzという恐るべき広周波数応答)。耳がよい人々とは言っても、これはたった二人だけの意見です。「スタジオで仕事に使うのならこのヘッドホン」と選ばれたものなので、自宅で音楽を楽しむ目的には向いていないかもしれません。また、MDR-CD900STが向いていない音楽ジャンルもたくさんあります。

二人とも「こんなにいいヘッドホンが日本国内限定販売なのは納得いかない」と言っていて、イヤートレーニングの先生には「次回帰国時にはぜひ入手してきておくれ」と言われました。より高価で最新技術満載のヘッドホンはいくらでもあるでしょうに(たとえば約4万円のMDR-SA3000は100kHzまで再生できるそうですよ)、定価2万円以下で10年以上前のモデルがいいなんて、なんだか興味深いです。

・・・そのMDR-CD900STを試させてもらいました。若干中音域が抑えられている明るめの周波数応答で、抜けている周波数帯には気づきませんでした。なによりも驚いたのはMDR-CD900STで実感できるにごりのなさ。定位感がはっきりしていて、オーケストラ内の楽器の位置と輪郭がはっきりと分かるような音なのでした。ドライバー・ユニットの時間方向の解像度がとても高い(入力信号への追従が速い)印象です。聴覚と視覚だから感覚モードが違うんですが、愛知万博ソニー館の高解像度ディスプレイを見たときのような感覚です。あぁ、もっといろんなヘッドホンを聞きたい・・・。