ワインの品質を計算する方程式

経済学者Orley Ashenfelterによる「ワインの品質を計算する方程式」というのがあって、それは

ワインの質=12.465+0.00117×冬の降雨+0.0614×育成期平均気温−0.00386×収穫期降雨

なのだそうです。その年の気候データを入れて計算すると、ワインの品質がどの程度のものになるのか分かってしまうのだそうです。人の舌に頼らなければ分からなかったワインの品質が、気象情報から導き出せてしまうのは、なんだか不思議な感じがします。
ただし、注意しなければならないのは、この方程式は「ワインの質」を「ワインを作るためのブドウの質」という形で考えていること。ブドウの産地、ワインの種類(赤か白かなど)、ワイン職人などは定数として決め打ちしているにしても、ブドウが決定できればワインが決定できるという考え方に基づいた方程式です。

また、この方程式は、ワインの質の判断基準は時代によらず普遍だという前提に立っている方程式でもあります。重回帰分析を使って得られた方程式というのは、どんな方程式も「すでに得られている情報をもとにして予測式を作る」というやり方で作られています。すでに得られている情報というのは、未来を予知することができない以上、過去の情報でしか有り得ません。なので、できあがった方程式は過去のデータを元に正確に現在を示すことができるかもしれませんが、現在の情報を元に未来を予測したとしても、それが正確な値になるかは分からないのです(大事が起こらない限り、ある程度は予想の範囲内に収まるとは思いますが)。

同様の理由で、いまだに株式相場の動きを正確に予想する方程式はありません。ある程度の予測方程式が作れたとしても、その方程式がベースとしている情報が過去のものである以上、どうしても予測精度は限られてしまいます。最新の情報をもとに方程式を逐次更新していくことにしても、やはりブラック・マンデーのような想定外の出来事を予測することはできないでしょう。人間が作る方程式は、人間に課せられた制約の中でしか、機能を発揮することは出来ないのです。