日本音響学会2009年春季研究発表会

今日の目当てはHRTFの特別セッション。千葉工業大学の飯田さんの発表が面白かったです。僕が会津大学にいた時に、修士生が取り組んでいた問題に似たものですが、基礎的な部分で解決しているので、とても応用範囲が広そうです。関連文献は以下(ElsevierのApplied Acousticsサイトから無料閲覧できました)。

Kazuhiro Iida, Motokuni Itoh, Atsue Itagaki, and Masayuki Morimoto. ``Median plane localization using a parametric model of the head-related transfer function based on spectral cues,'' Applied Acoustics, vol.68, no.8, pp.835-850. August 2007.

ホントに簡単に要約してみます。頭部伝達関数(HRTF)の何が音の高さ方向の知覚に寄与しているかを調べるために、まずHRTFの4kHz以上にある大きなピーク(スペクトルの山)やノッチ(スペクトルの谷)をモデル化したものを用意。それらを低い周波数から順にP1、P2、P3・・・、N1、N2、N3・・・というように番号を付けます。全てのP?とN?がそろっているときには、モデル化する前のHRTFと同等の性能で高さ方向の定位知覚ができます。P?とN?の組み合わせが高さ方向の定位感にどう影響しているか調べるために、モデルからピークとノッチの数を徐々に減らしていき定位感がどう変化するか実験によって調べます。結果、高さ方向の正確な定位感を得るには、最低限N1とN2があればよいことが分かりました。この2つのノッチは5〜10kHzおよび7〜15kHz付近に分布していて、音源が上下方向に移動したときに中心周波数が変化します。それを聞くことで高さ方向の定位が知覚できるのだとか。ただし、人によってはそれらのノッチを知覚するために基準とする3〜4kHz付近のP1が必要なのだそうです。P1は音源の高さ方向と連動しないので、P1とN1、P1とN2の周波数差を聞くことで、より正確な高さ方向知覚が可能になるのでしょう。