脳シミュレーションの二つの方法

人間の脳をコンピュータ上でシミュレーションする方法として、大きくわけて二つの方法があります。ひとつ目は脳内の電気信号の発生や伝播をコンピュータ上で再現するもので、ニューラル・ネットワークをどんどん大規模にしていく方法です。連想コンピュータを使うような方法もこれに類似しています。もうひとつの方法は人間の脳をブラック・ボックスだととらえ、中で何が起きているかを知らなくても、なにかしらの入力に対して人間と同じ出力がされれば良いというスタンスです。ひとつ目の方法は工学からのアプローチですし、ふたつ目の方法は行動主義心理学からのアプローチです。大きく分けてそれら二者の研究者たちが研究のトンネルを掘り進み、両側から掘っていた工学者と心理学者がいずれ真ん中で出会い、感極まって涙を流して握手して抱き合って、そこで盛大なパーティが開かれるだろう、というのが20世紀に考えられていた事でした。

でも、僕にはどうも、掘っている方向が違っていて、真ん中で出会える事はないだろうというような気がしてならないんですね。コンピュータ理工学と認知心理学の立場で見てはいるものの、まだ勉強不足なのでうまく説明できませんが、このままの方向を目指したのでは世界の研究者がどれだけ研究を続けていても脳や精神が完全に解明される事は永久に無いのではないかという不安を感じます。

どちらの方法も「入力があって初めて出力が生まれる/出力をもって知性を判定する」という考え方を採用しているのが、僕の中で腑に落ちないのです。人間の知性は入力がなくても自発的な行動を起こせることに意味がありますし、出力がなくても入力があった時点で知性が働いていると考えられます。現在の入力がなくても、過去の経験から未来を予測しながら行動することもできますしね。そう考えると時間やフィードバックの概念も必要になってきそうです。

というわけで、僕がちょろっと考えたニューラルネットパーセプトロンを置き換えるようなものをメモっておきます。もしかしたらもうすでに同じことを誰かが考えてるかもしれないけど。

  • すべてのノードは同等である(FF/BP法のような入力専用や出力専用のノードはない)
  • ノードは状態をもち、状態によって出力が変化する
  • 多入力:Winner Takes Allもしくは平均をとることでひとつの値に絞られるかも
  • 他出力:ひとつの信号を出力するが、接続先ノードそれぞれに違うゲイン・ファクターがかけられる
  • 自分自身へのフィードバックによって自ノードの状態を更新する
  • できればノード間の接続も自動的に行ないたい
  • 各ノードには乱数入力も備える

つまりは隠れマルコフでP2Pでニューラルな、なんだかわけの分からんシステムなのです。常に信号がぐるぐると巡っているので時間に沿った情報(メロディや話のあらすじなど)を表現することもできるでしょうし、乱数の加減によってそれまでつながっていなかったノード間がつながればヒラメキのようなものも表現できそうです。