Pd Recipe Book

Max/MSPにしてもSuper ColliderにしてもC/C++を使うにしても、オーディオ・プログラミングの世界は書籍が圧倒的に少ないのが現状です。とくに入門書がない。ゲーム制作入門書のごく一部に「あらかじめ用意したWAVファイルを再生」くらいしか書かれておらず、肝心の音合成をどうやればいいのかは書かれていません。洋書でもこれは!と思う本に出会えることはなかなかありません。入門書とは言い難いですが、ときおり『WAVプログラミング』や『iPhone Core Audioプログラミング』といった内容の濃い書籍が出版されていますので、オーディオ・プログラミングをやりたい人は、そういった中〜上級者向けの書籍をじっくり読み、試行錯誤を繰り返してなんとかモノにする、というのが現状です。

まったくプログラミング経験のない人が「オーディオ・プログラミングをはじめてみたい」と思ったとき、C++Javaを勉強した上でオーディオ特有のテクニックを勉強して、というのはハードルが高く挫折は必至です。比較的とっつきやすいMaxを使うという手も考えられますが、有料なので気軽に始めるのには難があります。無料のPure Dataはヘルプなどがすべて英語なので、こちらもハードルが高め。

そんな手詰まり感のあったところに、松村誠一郎著『Pd Recipe Book』が出版されました。PureDataを用いてリズムマシンシンセサイザーインタラクティブ・システムなどを制作することで、オーディオ・プログラミングの入り口に立てるようになるという書籍です。この書のメインである第4章のシンセサイザー制作から第5章のグラニュラー・シンセまでは個人的にかなり楽しめました。サイン波の合成から矩形波・鋸歯波、そしてウェーブ・テーブルにFM音源にグラニュラー・シンセ。理論の話も数式も出てこないので、音合成を試しながら理解できる、中高生にもおすすめできる本になっています。

この本でPureDataプログラミングが面白くなってきたら、次は洋書で難しめだけどAndy Farnell著『Designing Sound』とか、いいかもしれません。そしてC++を勉強してPureDataのexternalとか書くと、より広くて深いオーディオ・プログラミングの世界に旅立てそうです。そのためにも、まずは松村本で第一歩。