助言 —若さのように、若き日に無駄にしてしまうだけだろうが—

『助言 —若さのように、若き日に無駄にしてしまうだけだろうが—』というタイトルの以下の文章は、もともとMary SchmichによってChicago Tribune紙のコラムとして書かれたものです。Baz Lurhmannによって1999年に「Everybody's Free (to wear sunscreen)」(通称「Sunscreen Song」あるいは「Wear Sunscreen」)として発表されて有名になったもので、僕は留学先の寮の自室でMTVだかVH1だかで流れていたこの曲を聞いて感動して、すぐにCDを買ったけど歌詞カードがついてなくて、でも原作者のメールアドレスが載っていたので検索かけて、ようやく原作である『Advice, like youth, probably just wasted on the young - Chicago Tribune』にたどりついたのでした。

もちろん原文のほうが味わい深いし、当時の僕の語学力での翻訳なので怪しい部分もけっこうあります。今だったらこんな訳はしないだろうと思うところも沢山あります。だけど、僕が学生だった1999年5月3日(月)の作業を記録するためだけに掲載しておきます。

助言 —若さのように、若き日に無駄にしてしまうだけだろうが—

メアリ・シュミック/シカゴ・トリビューン紙 1997年6月1日

 97年卒業の皆さん、

 日焼けどめをつけなさい。

 君たちにひとつだけ将来へのちょっとした秘訣を教えるのであれば、日焼けどめがそれになるであろう。日焼けどめの長期間にわたる効果は科学者たちによって証明されているが、これから話す残りのことは私のとりとめのない経験によるものでしかない。いくつかの助言をしたいと思う。

 若さの力と美しさを存分に楽しみなさい。いや・・・若さの力と美しさなどというものは、それを失うまで理解できるものではない。しかし二十年後、自分の写真を見て、今ではもう手にすることのできない眼前に広がる途方もない可能性、そして自分の見た目がどんなに素晴らしかったか・・・そう思うことになる。君たちは、自分が想像するほど太ってはいない。

 将来のことを心配してはいけない。心配してもいいが、心配するのはガムをかむことで数式を解くのと同じ程度の効果しかないことを知っておいた方がいい。あなたがたの人生の大きな問題は、暇な火曜日の午後四時にいきなりやってくるような、頭をよぎりもしなかったようなことである場合が多い。

 毎日何かひとつ、自分を怯えさせることをやりなさい。

 歌いなさい。

 他人の心を傷つけてはいけない。あなたの心を傷つけるような人間と一緒にいることもない。

 歯を磨きなさい。

 嫉妬で時間を無駄にしてはいけない。前に出られるときもあるし、追いかけないといけないこともある。競争は長く、そして最後には、自分ひとりだけになる。

 受けた賛美の言葉を忘れないように。受けた侮辱は忘れなさい。うまく出来る方法を見つけたなら、私にも教えてほしい。

 昔の恋文はとっておきなさい。古い預金通帳は捨てなさい。

 伸びをしなさい。

 自分の人生をどうしたいかわからなくても、負い目を感じることはない。私が知っている、充実した人生を送っている人々は、二十二歳の時には自分の人生をどうしたいかなんてわかっていなかったし、私が知っている、とても充実した人生を送っている四十歳になる人々は、まだ人生をどうしたいかわかっていない。

 たっぷりとカルシウムをとりなさい。ひざをいたわりなさい。ひざが動かなくなったら、ひざが恋しくなる。

 あなたたちは結婚するかもしれないし、しないかもしれない。子供ができるかもしれないし、できないかもしれない。四十で離婚するかもしれないし、結婚七十五周年でいかしたダンスを踊るかもしれない。なにをするにせよ、自分を誉めすぎても叱りすぎてもいけない。自分のした選択はいつも半々だし、だれにとってもそうだ。

 自分のからだを楽しみなさい。できる限り使ってやりなさい。使うことを恐れることはないし、他人がどう思うかを心配することもない。あなたの体は、あなたが手に入れられる最高の道具なんだから。

 自宅の茶の間でしかできなくても、踊りなさい。

 書いてある通りにやらなくてもいいが、とにかく説明書は読みなさい。

 美容雑誌は自分自身を醜く感じさせるだけだから、読んではいけない。

 親のことを知りなさい。いつ親がいなくなるかなんて分からないから。兄弟とは仲良くしなさい。兄弟は君たちと過去をつなぐ最良の鎖で、きっとこれからも一緒にいることになるだろうから。

 友達は来て、そして去っていくものだと理解しなさい。でも、その中の大切な幾人かはしっかりつかんでおきなさい。地理的条件や生活習慣の違いを埋めるために、できるだけのことをしなさい。年をとるにつれ、若かったころのあなたを知る人が必要になってくる。

 一度ニューヨークに住むといい。でも自分が堅くなる前に離れること。北カリフォルニアにも住むといい。でも自分が軟らかくなる前に離れること。旅をしなさい。

 変わることのない真実は受け入れなさい。物価は騰がり、政治家は愛人をつくり、そして、あなたたちも歳をとる。そして歳をとったとき、自分が若かったころを美化するようになる。物価は妥当だったし、政治家は高潔で、そして子供たちは年上を尊敬していた。

 年上を尊敬しなさい。

 他人に支えてもらおうと期待してはいけない。信用基金が手に入るかもしれない。玉の輿に乗れるかもしれない。しかし、どちらもいつ打ち止めになるかは誰にも分からない。

 髪をいじりすぎてはいけない。さもないと君が四十になるころには、八十五のようになってしまう。

 だれの助言を受け入れるかは慎重に考えなさい。でも、助言してくれる人の話は辛抱強く聞くこと。助言は懐古のひとつの形なのだ。助言をすることは、ゴミの山から過去を拾ってきて丁寧に汚れを拭ってやり、汚い部分はペンキを塗りなおし、本来の価値以上に使うことに似ている。

 しかし、日焼けどめの効果についてだけは覚えておいてほしい。