平均余命

厚生労働省が生命表を公開してくれています。この中にある「平均余命」は、「今〇〇歳の人が(死亡状況が変化しないと仮定したときに)平均してあと何年生きるか」を表しています。〇〇歳のところを新生児(ゼロ歳)にしたものが、いわゆる「平均寿命」です。

www.mhlw.go.jp

令和5年度の簡易生命表を見ると、たとえば現在30歳の男性の平均余命は51.72年となっています。(いま生きている)30歳男性は平均して81.72歳まで生きそうだね、と読めそうです。また、60歳男性のところを見ると23.68年です。(いま生きている)60歳男性は平均して83.68歳まで生きそうだ、となるわけです。

ここで注意したいのは、「(いま生きている)」の部分です。若い人のほうが1.96年ほど平均余命が短いのは、30歳から60歳までの間に亡くなる可能性があるからです。すでに60歳になっている人は、追加で(30歳から60歳までの)30年間を生き延びたということなので、生存者バイアスのようなもの(?)が入っているのですね。ということは、ゼロ歳児の平均余命が最も短くなるはずです。だって30歳まで生きられない人たち、 60歳まで生きられない人たち、100歳まで生きられない人たち……全ての人たちを含んだ値ですから。ゼロ歳児の平均余命を見ると81.09歳です。平均で今の60歳よりも2.59年短い人生です。

さて「平均余命の年次推移」という表を見ると、2020年を境にして平均余命が数年続けて下がったのが確認できます。仮定とされている「現在の死亡状況が変化しない」が崩れたからなのでしょう。年齢層にかかわらず平均余命が下がっているので、子供から高齢者までまんべんなく影響を受けているようです。これって、けっこう大ごとだと思いますよ。これは、あなたが何歳まで生きられるかを表すデータではなく、あなたが作った世界の中で、あなたの歳まで生きられる(あなたより年下の)人がどれだけ減っているか、というデータですから……。