一生の体感時間ってどのくらい?

僕はたまに周囲の人にこの議論を持ちかけるんですが、ここにも書いておきます。自分が考えているほど一生は長いものじゃない、という話です。

生まれたばかりの赤ちゃんがいるとしましょう。この子にとって、いままで生きてきた人生はほんの数分です。ほんの数分がこの子にとっての人生の100%です。一年経って、一歳の誕生日を迎えたとき、この子の人生の100%は一年間になります。次の一年間、つまり二歳までの一年間は、いままで生きてきた一年間と同じ分だけの長さです。・・・この子が十歳の誕生日を迎えたとき、人生の100%は十年間です。次の誕生日までの一年間は今までの人生の10%の長さです。

さて、人間の感覚器官は相対的な値しか感じることができません。絶対的な値は感じることができないのです。いつもと同じ照明をつけた部屋に入ったとしても、外の天気に応じた明るさによって、部屋の中の明るさが違って感じることがあります。これも「部屋の中の明るさ」という値を「いままで自分がいた場所の明るさ」の値と比べて感じることによります。もし「絶対的な値を感じることができる」と考える人がいるのであれば、人間が定めた単位をどれでもいいからひとつ持ってきて考えてみてください。なにかと比べないで定めた単位はないはずです。途中の理由づけを飛ばして結論を書きますが、人間が絶対的な値を感じることができるのであれば、外的な何かと比較して作った単位を使う必要はないのです。

年齢の話に戻ります。人間は自分自身以外の人間として生きることはできませんから、時間の感覚というのは自分固有のものになります。つまり他の人の時間の感じ方を、自分のものとして感じることができないということです。自分自身としか「感じ方」を比べることができないので、時間の長さの感じ方に関しても自分自身が以前に感じたものとしか比べられません。ところが、時間は自分が望まなくてもどんどん進んでいってしまうので、おなじ一年間の長さにしても「一歳のときに感じた一年の長さ」と「十歳のときに感じた一年の長さ」の自分の「これまでの人生」に対する割合は変わってしまうのですね。

人生八十年として計算(Matlabsum(1./[1:80])が80年分)してみると、ゼロ歳から一歳までの体感人生の割合は約20%です。20歳から21歳までの一年間は約1%。生まれた瞬間から割合は急激に減ってゆき、減少の割合があるていど落ち着くのが15歳から20歳くらい。「ハタチ過ぎるとアッという間だよ」というのはこういう理由だったのでしょう。