オールマイティ

知人のblogに書かれていたことに関するコメント。「制約条件の理論」というビジネスの考え方があるのですが、その中のプロジェクト管理のところに書いてあった話をちょっとアレンジしています。

オールマイティに仕事が出来る人のところには他の人からどんどん仕事が持ち込まれます。他の人が手を出したけどうまくできなかったから投げられてくるものもあれば、他の人が手を出すことすらいやがるような仕事もあります。仕事が出来る人の守備範囲が広ければ広いほど、専門分野とは違ったちょっとした雑用なんかもたくさん流れて来ます。しかも、どの仕事も「できるだけ早くあげてくれ」と頼まれてしまうんですね。

たとえば、どれも同じく1時間かかるA、B、Cの3つの仕事がほぼ同時に入ってきたとします。まずはAを終わらせてからBにとりかかろうと思ってAの作業をしていると、Bの依頼主が「さっきの仕事まだ?」と急かしてきます。そこでAをやりかけにしてBに取りかかります。そうするとCの依頼主に「もうそろそろできる?」と聞かれ、あわててCの作業も開始します。仕事をしている人の頭の中では「A、B、Cぜんぶの作業をとりあえず開始しておけば、依頼主全員にその人の仕事をしているように見てもらえる」という意識が働いています。

ここでちょっと考えてみましょう。それぞれ1時間かかる3つの仕事を、(1) まずAを終わらせ、次にB、終わったらCをやるのと、(2) 15分ごとに区切ってABCABC...とやっていくのと、どちらが仕事が早く終わるのか?

(1) ひとつずつ:AAAABBBBCCCC
(2) すこしずつ:ABCABCABCABC    (1文字=15分です)

ぱっと見ではすべての仕事を上げるのに合計3時間かかっているので同じように見えます。同じように見えるのは仕事をしている人から見た目線だからなのですね。依頼主から見ると、Aの依頼主のところに成果がわたるのは、ひとつずつやった場合は依頼から1時間後なのに対して少しずつやった場合は依頼してから2時間半後です。Cの依頼主のところに仕事の成果がわたるのは依頼してから3時間後なので、どういう順番で仕事をしても変わりません。

この「依頼してから仕事が終わるまでにかかる時間」のことをスループットというんですが、3つの仕事の平均スループットは、ひとつずつが2時間、すこしずつが2時間45分です。しかも、すこしずつ仕事を取り替えながらやる場合は、頭の切り替えや準備の時間もあるので効率が悪いんですね。

というわけで、仕事を投げる側としては「今たまってる仕事が終わってからでいいんだけど・・・」という一言を付け加えると、急かしたときよりも仕事が早く終わる、というのを覚えておくといいですよ。いつになったら仕事が上がってくるか分からなくて不安かもしれませんが、どうせ仕事がたまってるときに新しい仕事を押しつけたって、できるわけないんですから。もしこれを読んでいる人が仕事を受ける側なら、きっぱり「手が離せないので、今の作業が終わった後にやります」と・・・なかなか言えないかなぁ?