騒音曝露レベルと許容曝露時間の関係

Apple Watchをつけていると、ときどき「90 dBを超えています」というような警告が表示されることがあります。これはWHO(世界保健機関)が以下で推奨している騒音(そうおん)曝露(ばくろ)レベルを超えそうになるときに警告してくれる機能で、音に関係する仕事をしている自分にとっては欠かせないものになっています。

www.who.int

WHO Global Standard for Safe Listening Venues and Eventsという文書にまとめられた推奨はつぎのとおりです(文書のAnnex 2参照)。「1年間に受けるレジャー騒音の平均が70 dB (LAeq, 24時間)を超えると健康への悪影響があるので、1週間あたりの騒音曝露レベルは1.6 Pa2 h(騒音レベルであらわすと80 dB (A)なら1週間で40時間)までにしなさい」となっています。

iOSの「ヘルスケア」アプリには以下のような表がありました。

騒音レベル 7日間あたりの時間
75 dB 127時間
80 dB 40時間
90 dB 4時間
100 dB 24分
110 dB 2分
120 dB 14秒

さて先日、スーパー耐久24時間レースに泊まり込みで観戦しに行ったのですが、レースカーが通り過ぎるときにはコース脇では80~90 dBくらいの騒音レベルでした。さすがに90 dBになる車両もあるものの、他の車両はピークでも85~87 dBくらいです(水素で走る車はだいぶ静かでした)。レースカーが通らない静かなときもあるので平均するともう少し低いはずですが、85 dBが24時間続くというかなり大きな見積もりをして、コース脇に24時間いて安全なのか考えてみます。

上記の表には85 dBがありませんが、10 dBの増加で時間が1/10になることが読み取れます。80 dBのとき40時間(=2400分)という定数があるので、A特性騒音レベルを𝐿 (dB)、許容最大曝露時間を𝑇ₘ (分)とすると、𝑇ₘ = 10(𝐿 - 80)÷10 ÷ 2400 と計算することができます。以下のようにプログラムにしてみました。

(defun noise-exposure-time (level)
  "Calculates allowed noise exposure time (in minutes per week) from
   noise level (dB, A-filtered) by WHO recommendation."
  (/ 2400 (expt 10 (/ (- level 80) 10))))

ここから計算すると、85 dBの場合は1週間あたり約12時間まで。アウトです。ただ、WHO文書には100円均一で入手できるような耳栓であっても、平均すると広帯域にわたって10 dB以上の減衰があるとの記述もあります(文書のBox 5参照)。85 dBが75 dB以下になりますので、これなら24時間耐久レースでも耳へのダメージもそんなに心配しなくて良さそうです。僕は100均耳栓とAirPods Pro 2のノイズキャンセルを併用してしのぎました。AirPods Proは騒音を消しつつ話し声は通してくれるのでとても便利ですよ(amzn.to/3VkR4be)。

というわけで、大きな音のする場所では耳栓をしましょう!(耳栓なしの子供を多く見かけたので心配になりました)