宇宙時代の到来

僕の好きな筆記具にまつわるエピソードの中でも有名なものに以下のようなものがあります。技術も形も美しく、ニューヨーク近代美術館の永久コレクションにも加えられているペンを作った人たちの話です。

・・・冷戦の時代、米ソは宇宙開発でも競争を強めていました。どちらが先に宇宙空間に物を送り出すか、どちらが先に生命を外に出すか、どちらが先に人間を打ち上げるか、どちらの人間が先に月面を歩くか・・・。そんな競争が白熱する中、高度な頭脳を持つNASAの技術者をもってしても宇宙空間で書けるペンを作ることは難しかったといいます。宇宙に人を送り込んだとしても、ペンがなければ実験結果を書くことはおろか、日々の報告書や日誌を記すこともできません。そこでフィッシャーという会社が考え出したのが、インクタンクの中に圧縮窒素を詰めて、インクを押し出すという技術。圧縮窒素の圧力が高すぎても低すぎてもうまくインクは出ず、開発は難航を極めましたが、とうとう製品化にこぎつけ、アームストロング船長はフィッシャーのペンを宇宙に持っていきました。

そうなると旧ソ連陣営も負けていられません。ソ連が宇宙時代の筆記具として自信を持って宇宙に送り込んだのは、鉛筆でした。