アプリケーションの国際化

アプリケーションが開発されるとき、多くのものは単一言語環境だけで動くように作られています。これまでは、それを翻訳して他言語でも動作するようにしてきましたが、Mac OS Xではひとつのアプリケーションが多言語を扱えるようにする仕組みが元から備わっています。ひとつのアプリケーション・ファイルに複数言語のための情報が入っているわけです。これによって一台のマシンを日本人と中国人が共有しても、設定変更をするだけで日本語と中国語の切り替えができるわけです。マルチリンガル機能はアプリケーションのファイルサイズをちょっと大きくしてしまいますが、開発者が最初にちょっと苦労すれば、ひとつのプログラムをどの国の人にも売り込めるので、費用対効果も高いと思います。

もちろん、「文字を使うから多言語化が必要になる→すべてアイコンで表現しよう」という考え方もあります。アイコンは考えを直感的に把握できますし、使い勝手をよくするためにも有効です。アイコンは言語に束縛されないという利点がありますが、アイコンを作るときには文化の違いまで考えないといけないのを忘れがちです。たとえば「ごちそう」というアイコンを作ろうと思って豚の丸焼きの画像を使ったとすると、ある人は「異教徒のいけにえ」だと思うかもしれませんし、ある人にとっては「先史時代」になるかもしれません。

Mac OS Xで標準メーラーとなっているApple Mailは、アイコンまで気を配ったソフトのひとつです。右上のスクリーンショットの上半分が地域設定を北アメリカにしたとき、下半分が日本にしたときですが、言語が英語と日本語に切り替わっているだけでなく、メールボックスのアイコンが違うのが分かります。アメリカでは自宅の庭先によく見られる郵便受けですが、日本では郵便受けは門扉や戸と一体化していることが多いので、会社のデスクにあるようなメールトレーをアイコン化したのでしょう。アプリケーションを多国で使ってもらおうと考えたときには、言語も文化もひっくるめて「国際化」しないといけないのです。